フランチャイズ契約の基礎知識と契約書作成について
フランチャイズ契約の基礎知識
フランチャイズは本部と加盟店が独立しながらも、一定の契約関係に基づいて事業を展開するビジネススキームです。
このページでは、これからの自らの事業をフランチャイズ展開することを検討している事業者の方向けに、加盟店との間で締結するフランチャイズ契約に関する知識を解説します。
契約の基本知識を知っておくこと、そして発生しうるトラブルの対処法を知っていることは、いわば経営において守りの領域ではありますが、トラブルの未然防止や発生時の対応いかんによってフランチャイズとしての成長度が違ってきますので、十分な知識を蓄えておくことが大切です。
本稿では、本部構築の際に必ず加盟店と契約する、フランチャイズ加盟店契約についての重要ポイントについて、弊社が辿ってきた事例を交えながらわかりやすく解説します。
1.フランチャイズ契約の基本知識とポイント①
加盟店は複数のフランチャイズ本部の様々な条件を加味しながら、加盟店として契約することを決断します。その検討事項の中には契約書の内容に納得できるかどうかという点も含まれます。
個人事業主を対象としたフランチャイズでもトラブルを予防するために契約書を整理することは大切ですが、特に資金力のある法人のフランチャイズ加盟を想定した、開業資金が大きいフランチャイズを本部として展開する場合には、フランチャイズ加盟契約書の重要性は一層高まります。
・法人の加盟において契約書はさらに重要
法人が加盟店として参入する場合、複数の出店を行いスピーディな事業展開を進める力強いパートナーとなってくれる可能性がありますが、加盟に際しては会社として著しく不利な条項がないかリーガルチェックを入念に行う傾向にあるからです。
ビジネスモデルがしっかりしていても、契約内容が明確になっていないことを理由として加盟店加入検討者の信頼を得られなければ、加盟を見合わせる可能性もあります。契約書が整備されていなければ、その分だけ加盟店を増やす機会を失いかねません。
加盟店希望者は多数のフランチャイズ本部から好きな本部を選ぶことができるのです。
本部と加盟店の契約関係が明確になっていることは、加盟店を増やすための大切な取り組みです。
この記事を参考としてフランチャイズ契約に関する確かな知識を身につけ、加盟店が安心してフランチャイズグループ加入することができるフランチャイズ本部を目指しましょう。
2.フランチャイズ契約の基本知識とポイント②
フランチャイズ契約は、加盟店に本部が提供するブランドやノウハウを利用する権利を与える形で事業展開を行うことができる契約です。その中で押さえておくべき契約の項目は以下の通りです。なお、本稿は、フランチャイズ本部を立ち上げる事業者が契約にさだめるべき基礎的な項目について概観したものです。
実際にフランチャイズの契約締結については、その業態によって定める詳細な契約内容はひな形をそのまま当てはめることはできません。契約書にはフランチャイズ本部としての哲学・加盟店に対する育成方針が反映されるものです。
必ず、契約書作成にあたっては、弁護士による詳細なリーガルチェックを行ってください。
3.フランチャイズ契約について
ここからは、具体的にフランチャイズ加盟契約に盛り込むべき代表的な情報をご紹介していきます。
4.フランチャイズ契約の目的
フランチャイズ契約全体についての目的を定める項目です。本部と加盟店の権利関係を定める契約書(以下、本記事において「本契約書」といいます。) であることを明記します。
5.営業店舗
店舗を構えるタイプのフランチャイズビジネスの場合には、営業店舗の住所を明確に定めます。契約書に加盟店の場所を明確に記載することで、双方の権利と義務を明確にするためです。
また、フランチャイズに関してはテリトリー制を定めて加盟店が一定の区域に出店する権利を本部が認める場合があるため、加盟店同士の誤解や係争を防ぐために重要です。
頻繁にあることではありませんが、店舗の変更がある場合には、契約書を修正します。
6.レイアウト・デザイン
どのフランチャイズであっても、そのブランドに特有の内装があります。有名な飲食店のフランチャイズの例として、コメダ珈琲店の内装を思い出してみてください。
どの店舗でも、レトロな雰囲気―昭和の喫茶店の雰囲気を醸し出すため、木材をふんだんに利用した内装、ふかふかの赤い椅子、プライバシーが保たれる個室など、すべての店舗で内装パターンが統一されています。デザインを統一することで、ブランドイメージが強化されてグループ全体としての力が高まるのです。
当ブログを運営しているヴィラでも、加盟店契約においてアジアンテイストを活かした店舗設計をすることを定めています。アジアンテイストのイメージについて、統一感をもたせた内装にするよう加盟店との契約に盛り込んでいます。もっとも、個別の店舗によってデザインの指向性は異なりますので、本部としてデザインを確認しながら許可を出しています。
レイアウト・デザインについての事項を契約において明確に定めることにより、加盟店が行うフランチャイズ店舗の内装・外装のデザインが、本部が主導ずるブランドイメージと一致することが保証されるのです。
・レイアウトに関する例外規定
もちろん、条例やテナントの条件により、加盟店の責任によらずして本部の指定したデザインを利用できない場合には、契約書を柔軟に解釈することも必要です。
例えば、看板については、アジアンリラクゼーションヴィラでは基本的には黄色地に赤の文字の看板を利用することを定めていますが、テナントの状況によっては、貸主様のご意向、または地域の規制や景観法などによりデザインを変更する場面があります。
このような場合には柔軟に対応していますが、基本的には統一感のあるデザインを採用し、看板を見ただけでヴィラグループであることがわかるようにして、顧客来店の安心感へ訴求しております。
7.商標類・ブランド利用権
フランチャイズ契約においては、本部が持つ商標権や知的財産権が重要な役割を果たします。本部は、加盟店に対し、商標やロゴ、独自のノウハウを使用する権利を許諾します。
商標やロゴを使用することができる範囲についておいても定めましょう。一般的に加盟店は、加盟フランチャイズの看板、ウェブサイト、名刺、チラシ、SNSなどで利用することはできますが、独自に商品を開発した場合に本部のロゴを利用できるかどうかは本部の判断のわかれるところでしょう。
また、契約期間終了後や解約時には、本部は加盟店が商標を利用する権利の使用を停止しなければなりません。加盟店は、商標や知的財産を適切に扱い、無断での利用や競合他社への漏洩を防ぐ責任があります。
8.経営指導
フランチャイズ本部は加盟店に対して経営指導を行います。本部を運営する会社は直営店で成功しており、その成功パターンを模写して成功確率をあげるのが加盟店の成功パターンです。本部が行う経営指導は、本部の成功事例をいかに忠実にトレースできるかにかかっています。大きく分けると以下のような項目が想定されます。
・店舗の内装や外装に関する指導
・店舗で使用する消耗品の指導
・商品構成・管理・発注等に関する指導
・スタッフ教育に関する指導
・集客に関する指導
・求人に関する指導
・加盟店管理システムに関する指導
・その他店舗の営業に関して必要となる指導
本部では、直営店や加盟店の経営状況を把握しながら、各店舗の経営状況を改善するよう十分な指導する義務があります。そして経営指導の方法については、基本的に成功している施策を、加盟店に情報提供するものになります。
仮に、加盟店が本部の指導に従わない場合にはフランチャイズとしての成功ノウハウを正確に伝えることができず、失敗する可能性が高まるのみならず、グループ全体として統一したサービスレベルを維持できなくなることが考えられます。
例えば、コンビニエンスストアの加盟店は販売商品の仕入れルートが基本的に本部指定の仕入れ先に限定されており、独自の仕入れによりヒット商品を仕入れることは原則認められておらず、本部の指導にしたがって仕入れを行う必要があります。また、全国的に行う商品キャンペーンや値引きには参加しなければなりません。
・立ち入り検査
加えて、加盟店が本部の指示に従わない場合に備えて、より具体的に店舗において本部の担当者が加盟店の経営状況についてヒアリングを行い、フランチャイズ経営に必要な経営指導ができるように、立ち入り検査ができるように定めておくことも一法です。
このようにフランチャイズ全体のサービス内容・レベルを維持するため、フランチャイズ本部の定めたグループ全体の経営方針に基づいて経営指導を行う必要性はみとめられるものの、本部は加盟店に対し、経営状況を向上させるための指導を十分行う必要があることはいうまでもありません。
・加盟店の独自性をどこまで認めるか
他方、加盟店の事業者は、従業員ではなく独立して事業を始めようと考える独立した事業主ですから、自分が考えるやり方で経営をしてみたいという希望が寄せられることもあります。
こうした加盟店オーナーの声を本部が認める形で、加盟店が独自の施策を行うことは必ずしもマイナスの側面だけではなく、本部が把握している限りにおいて新しいサービス拡充、競合対策につながるプラスの側面もあります。
フランチャイズ店舗を展開している餃子の王将では、地域や客層に合わせた独自メニューを自由に作ることが許されており、独自メニュー・サービスが多いことで知られています。餃子の王将というブランドにより一定のサービス品質は維持しつつ、オリジナリティあふれるメニューで顧客満足度を上昇させ、かつ加盟店オーナーのモチベーションを維持するという経営方針を掲げているのです。
このブログを書いているアジアンリラクゼーションヴィラでも、ヴィラの基本施術であるもみほぐし・タイ古式マッサージ・バリ式リンパマッサージについては各店舗のセラピストが手技(施術の流れ)を守って習得することを義務付けていますが、店舗オリジナルのメニューを開発することは許可しています。
ブランドイメージを守る為、あまりにも多くのメニュー追加することは不可となっておりますが、一定範囲内の独自性を付与する事で、店舗間の競争原理も働き、更にはお客様からの反響が良い商品やメニューについては、本部が情報を吸い上げて各店舗に共有するなど、よりブランド力が強化される戦略でもあります。
・加盟店の施策を本部に取り入れる
加盟店の強い要望により独自に導入した施策がうまくいき売上向上などに顕著に効果があった場合には、本部がその情報をアレンジして、加盟店全体に情報共有をすることも考えられます。
加盟店はそれぞれが独立した事業体ですので、様々な施策についての要望を本部に寄せることが考えられます。
一歩進んで、本部が把握している限りにおいて加盟店が新しいサービスを適用することを認めるという形で経営指導の条文を作成することも考えられるでしょう。
加盟店は独立した店舗ですから、経営指導をどのように進めていくかというのはデリケートな問題であり、本部によって加盟店の自由度をどこまで認めるかは考え方が異なる部分であることも意識して契約の条文を作ることをお勧めします。
・加盟店の研修
フランチャイズシステムにおいて、加盟店スタッフの継続的な研修はフランチャイズ店舗が成功するかを決める大切な要素です。どんなに再現性の高いオペレーションマニュアルがあったとしても、十分な研修がなければ意味がありません。
世界中でフランチャイズ展開しているマクドナルドは、未経験のスタッフでも十分なトレーニングを受けることで、マクドナルドのオペレーションができるように加盟店スタッフ向けに階層別に細かい研修メニューが組まれていることで有名ですが、一連の研修も加盟店が受けなければ意味がありません。
業務上必要な研修をスタッフに受けさせることを義務付けることで、加盟店が研修に参加し、サービスレベルを一定に保つことが可能となります。
・長期間にわたる研修ももれなく受講してもらうために
加盟店に必要な研修は、開業前の研修が重要ではありますが、本部によっては開業後の研修も行う場合があります。
契約において、どのような研修を受講することを加盟店に義務付けるのかを明記するとともに、店長・スタッフが必要な研修を受講しないまま店舗において営業することを認めないことについても明記します。
アジアンリラクゼーションヴィラにおいても、各店舗において本部における研修内容を習得したスタッフが最低でも1名店舗において施術することを義務付けることにより、店舗でのサービスレベルを一定の品質に保っています。
9.営業時間・営業日
店舗の営業時間について、一定の時間を定めます。事業にはそれぞれお客様の来店しやすい時間帯がありますので、その時間に営業することを義務付けます。お客様からみればどの店舗も同じサービスを提供していることを想定しており、同じ時間帯に営業しているという期待をもっているからです。
例えばコンビニエンスストアでは、グループ全体で24時間営業が期待されていますので、営業時間について24時間営業することが契約で定められています。
営業日についてもサービス業であれば土日に営業することが多いでしょう。
アジアンリラクゼーションヴィラでは、午前11:00~午後9:00までを営業時間としており、土日は基本的に営業することを定めています。
リラクゼーションサロンに来店する目的は癒しの時間をすごすためですから、ある程度お客様に自由な時間があるときに来店するものです。平日はややお客様が少なく、平日夜と土日はお客様が多いというのが典型的なリラクゼーションサロンの姿ですので、その時間に営業するように定めています。
10.加盟店管理システムの利用
加盟店の状況を把握するため、本部としては加盟店の情報を管理するためのシステムを導入することが一般的です。同じシステムを利用することにより、集計が容易になりますし、同じフォーマットで比較することで加盟店同士の成績の違いを把握することが容易になります。
季節的な要因で売り上げが変化する商品を販売する場合や加盟店全体で特定の商品に広告を打った場合に、売上がどのように変化するのかについてもリアルタイムで把握することが可能となります。リアルタイムで把握することができれば、それだけ次の手を打つのが早くなります。
そして、同じノウハウを用いて事業を展開していても、どんなフランチャイズ事業でも、好調に推移する店舗とそうではない店舗があります。上位の店舗と下位の店舗にはどのような違いがあるのかについて把握する必要があります。
そして下位の店舗については、直営店のノウハウ、上位の店舗のノウハウをうまく利用して改善指導をしていくものです。
・経営の改善指導には数値による判断が基本
その改善指導のためには、店舗の経営は売上・客数などの数字を適切に把握することが基本となり、どこに問題点があるのかを数値で把握しなければなりません。
また、加盟店が本部に支払うロイヤリティーの計算においても、迅速かつ正確な計算には全店舗で統一した、加盟店システムを使うことが公平です。
逆にシステムを利用することを拒否する加盟店がいた場合には、フランチャイズ全体の業績確認が困難となり、ついてはグループ全体の経営に悪影響を及ぼしかねません。
したがって、数値を把握するためには加盟店システムの利用を契約で義務付けることが必要なのです。
11.エリアテリトリー
フランチャイズシステムにおいては、既存店舗から半径2km以内には新店舗を作らない、同一市内には店舗を作らないなど、加盟店が一定の商圏を同一フランチャイズグループ内で確保することを認める仕組みを設定することがあります。これをエリアテリトリー制といいます。
エリアテリトリー制についても、どの地域にどの加盟店が権利を持っているかについて明確に定めておかないことが原因で、将来的に本府と加盟店、加盟店同士でトラブルが発生することにもつながりかねません。
したがって、エリアテリトリーを定める場合には、それぞれの加盟店に認められる範囲を明記すること、そしてほかの加盟店が出店することを本部として認めないことを契約書に明記します。
12.加盟金・ロイヤリティー
フランチャイズに加盟する際に支払う加盟金およびロイヤリティーに関する定めを置きます。加盟金については一定の金額であることから明記することでトラブルを予防できますが、ロイヤリティーについては計算の方式がいくつか挙げられるため、加盟店との間で認識の相違がないように十分な説明を行うべきです。
主なロイヤリティーの計算方法はロイヤリティーの金額を決めるにはいくつかの方法があります。ロイヤリティーの水準は業界ごとに異なりますが、ビジネスモデルから想定される利益率を考慮してロイヤリティーの水準をきめます。代表的な決め方としては、売上歩合方式、定額方式が挙げられます。
・売上歩合方式
もっとも普及している方式は、売上歩合方式です。これは、売上のうち一定の歩合をかけてロイヤリティーとする方式です。3%~20%など割合は業種によって大きく異なっていますので、事業を展開する業界のロイヤリティーについて把握しておく必要があります。
売上歩合形式の中にも、一定の売上に到達するまではロイヤリティーの支払いを定額とするパターン、開業後半年はロイヤリティーを減額するパターンなど、それぞれの本部が加盟店に対しての取組みを行う場合もあり、様式は様々です。
売上水準によって、歩合率が変わるパターンを定めている場合、例えば100万円までは10%、200万円までは8%、それ以上は6%といったようなケースも設定することができます。
・定額方式
他方、定額方式は、売上に関係なく毎月同じ額のロイヤリティーを支払う方式です。稼げば稼ぐほど、そのまま加盟店の利益となるため、加盟店のインセンティブを引き出せるというのがこの方式の特徴でしょう。
・加盟店に対するサポート度合いによりロイヤリティーの水準は決まる
契約書を作成するときは、これらのうちいずれの方式を採るのか、割合はどれほどにするのか等を詳細に定め、記載するようにしましょう。
また、同業種であっても、本部支援の内容によりロイヤリティーは異なります。開業支援を中心として、開業後は看板・ブランドを貸与することを想定しているフランチャイズ本部では比較的ロイヤリティーを低く設定することになるでしょう。
一方で、開業後も求人や集客に関する支援を手厚く行うフランチャイズ本部であれば、その分加盟店が集客や求人に費やす出費が減少しますので、高いロイヤリティーを設定することに合理性があります。
また、本部に支払った加盟金・ロイヤリティーについては、加盟店に返済しないことも盛り込んでおくべきでしょう。最も、本部としてロイヤリティーに見合っただけの支援を行わない場合には、将来的にロイヤリティーの減額をもとめて債務不履行を理由として加盟店から返還請求訴訟が行われる可能性もあります。
・ロイヤリティーが高いほど本部の指導責任は求められる
一般的にロイヤリティーの設定水準が高ければ高いほど、本部が担う経営指導の内容の範囲は広く、また手厚い支援となることが求められます。
ロイヤリティーを高く設定すること自体には問題はありませんが、加盟店がそれに見合ったサービス(経営指導・集客・求人支援・新規商品開発など)が受けられない場合には、ロイヤリティーの水準が高くなるほど加盟店との間でトラブルが発生する可能性が上がることには留意が必要です。
・支払い条件の定め
ロイヤリティーは、フランチャイズ本部を経営するうえで最も大切な収入源ですので、ロイヤリティーの算定・請求時期・支払時期・支払わない場合の罰則(契約解除)について詳細に契約書に定めます。
特に売上条件や、複数出店をした場合にロイヤリティーの計算方法が変わるシステムを導入することを検討する場合には、加盟店が誤解を招かないような表現を工夫しわかりやすく契約書に定めることが大切です。
12.広告・宣伝費用
フランチャイズのグループが拡大してくると、全国規模で大きな広告宣伝を行うことがあります。
TVCMや雑誌などの媒体に広告を打つ場合、広告宣伝費として店舗ごとに負担を求めることが一般的です。広告宣伝費は、支払うだけではなく顧客数の増加・売上の向上という形で加盟店の経営にプラスの効果があるのですが、加盟店が支払わない場合には資金が集まらず、CMの数を十分に投下することができません。
広告宣伝費用についても契約で定めることにより支払いの義務を定めることができますが、ロイヤリティーが本部運営費用や加盟店サポートに利用されているのと同様、こちらも加盟店のための施策になりますので、十分な説明をすることが求められます。
・システム開発費用の負担等
そのほか、加盟店が利用するシステムをさらに便利なものに更改する場合には、システム負担を加盟店に求めたい場合もあるでしょう。その場合に、事後的にシステム利用費を都度徴収することは加盟店の合意を得られない可能性がありますので、事前に契約書に盛り込みます。
契約書に記載されていない費用を加盟店に請求するためには、都度合意をすべての店舗にとる必要がありますので、事前に費用負担について設計し、契約で明記することの重要性がうかがえると思います。
13.競業避止義務
競業避止義務とは、一般的にフランチャイズ加盟店に課せられている義務であり、同業を営むことを禁止するものです。競業避止義務は、独自の開業を行う、または他のフランチャイズ加盟を問わず、一律に禁止する条項です。
競業避止義務違反が課せられている理由としては、ノウハウの流出を避ける、また他の加盟店の利益を守るという2つの理由が挙げられます。
禁止義務がない場合には、加盟店がフランチャイズのノウハウだけを利用し、同様の事業を新たに開始するのみならず、フランチャイズ本部を立ち上げライバルとなる可能性もあります。
・脱退後の競業避止義務について
加盟店は、フランチャイズ加盟中は競業避止義務を負うことはもちろん、脱退後も一定期間競業避止義務が課せられることが一般的です。3年程度であれば合理的と認められる可能性が高いですが、10年となると認められない可能性が高いでしょう。
契約終了後についても、一定の範囲で競業避止義務を元加盟店に負わせることは可能ですが、加盟中と同程度の競業避止義務違反を課すことは、一般的に加盟店が持つ営業の自由に対する過度の制約となり、競業避止義務の範囲は加盟中よりも限定的なものになると考えられます。
14.報告義務
フランチャイズでは各店舗の売上・その他重要な店舗に関する情報を報告する義務を定めるのが一般的です。前述した加盟店管理システムにおいて数値の報告を本部側で確認することが可能ではありますが、定期的な報告義務を契約書に定めることで有効性が増します。
数字に表れた状況について、詳細に加盟店に確認することにより、実効性のある指導が可能となるからです。
定期的な加盟店の経営状況把握に加えて、突発的に発生した予期せぬ課題についても報告することを定めたほうがいいでしょう。特に事故などのバッドニュースについては本部に速やかに報告することを契約書に定めます。
15.秘密保持義務
加盟店は、定期的に支払うロイヤリティーと引き換えに、本部から店舗営業に必要な情報の提供を受けて営業します。
このノウハウが外部に流出した場合、本部や他の加盟店が損害を受けることになりますので、契約でフランチャイズに関する秘密保持義務を定めます。秘密保持義務を負う契約内容については、本部から提供される情報全般とするのが一般的です。
・目的外利用の禁止等
秘密保持契約においては、加盟店が本部から得た情報について、フランチャイズ店舗経営以外の目的で利用することを禁止します。
そのほか、秘密情報の加盟店側での取扱い責任者や、例外的に業務を委託する場合に情報を開示する必要がある取引先についての定めを置くなど、情報を取り扱う人の範囲をできるだけ明確に限定するとよいでしょう。
・契約終了後の秘密保持義務について
契約期間中に秘密保持義務を負うことはもちろんですが、契約期間終了後も内容によっては秘密保持義務を負うこととなります。そこで、まずは契約終了後の秘密保持契約期間を有期・無期とすることについて検討します。
秘密保持義務を有期とした場合の長さは一般的に秘密情報が相当陳腐化する3~5年とされていますが、秘密保持義務を課す内容によって左右されますので、その内容によって適切な期間を定めます。
15.反社会的勢力の遮断
反社会的勢力との関係が認められた場合、関係をもっていた当該店舗だけではなく、フランチャイズグループ全体が風評被害を受け、経営上悪影響が及ぶことが想定されます。
企業と反社会的勢力とのつながりについては、年々コンプライアンス上の見方が厳しくなり続けています。
加盟店に反社会的勢力が加盟しないよう、または反社会的勢力の加盟が発覚した場合には即座にフランチャイズ契約を打ち切ることができるように必要な条文を定めます。
・契約期間
契約期間については、そのビジネスの性質を判断しながら定めます。一般的には、投下資金回収期間を参考に設定します。
加盟店が投下資金を回収する期間が短い期間であればその分契約期間も短くなります、長期間にわたり回収する場合には長めに設定します。
加盟店は契約期間満了前の解約については、悪意のある短期的解約(営業ノウハウのみを取得して解約することを当初から目的としている解約)を予防するため、一般的に違約金を払うことを定めるのが一般的ですので、その違約金とあわせて適切な期間を設定します。
16.契約解除事由
本部と加盟店は、あくまで独立した事業者同士の契約関係ですので、互いの信頼関係があることがビジネスを継続していくこととなります。しかし、場合によってはお互いの信頼関係が失われ、フランチャイズ契約を継続することが困難になることがあります。
ロイヤリティーの未払いなど契約上の義務を履行しない場合のほか、経営破綻(個人の場合は自己破産)した場合には当然に解除できることを定めます。
17.損害賠償等
損害賠償契約についてもあらかじめ明記します。加盟店が損害賠償を負うことが想定される典型的な事例としては、重過失または故意に風説の流布を行う、加盟店での事故を発生させる等のフランチャイズの信用を失墜させる行為をおこなう場合、秘密情報を漏えいさせた場合、ロイヤリティーの支払を怠った場合などが想定されます。
こうした事態が発生した場合、一定額の損害賠償請求を行うことができる旨を明記します。損害賠償の金額については、契約書に記載されている金額が根拠となりますので、ロイヤリティーの金額等客観的な数値をもとに設定します。
18.管轄裁判所
本部の所在地にて審理を行う管轄裁判所を定めたい場合は、専属的合意管轄裁判所の定めを置きます。専属的合意管轄裁判所とは、当事者の合意により指定した、紛争解決のための審理を専属的に管轄する裁判所のことです。 専属的合意管轄裁判所を定めると、基本的にはその裁判所でしか訴訟の審理ができなくなります。
例えば、専属的合意管轄裁判所を東京地方裁判所と契約で設定した場合、本部と加盟店の紛争解決のための裁判所は東京地方裁判所となり、それ以外の裁判所で訴えを起こすことができません。
19.フランチャイズ契約でのトラブルを避けるために
ここまで契約に関する典型的な項目をいくつか記載してきましたが、フランチャイズ契約トラブルの原因としては、契約内容の不十分な理解、本部と加盟店の意思疎通不足、販売方法やロイヤリティーの不一致などが考えられます。
加盟店が加盟を参加する際には、知識やノウハウがなくてもフランチャイズに加盟することで当該事業のオーナーとなり、利益を得られることに意識が集中しますので、フランチャイズとしての契約の縛りに目がいかず前のめりになりがちですし、本部としては加盟金がスポット収入として入るほか、加盟店が増えて初めてフランチャイズのうまみが出ることから契約を進めようとします。
加盟店契約は、勢いの部分もありますのであまり詳細に時間をかけることはおすすめしませんが、ロイヤリティーや、エリアテリトリーなど加盟店にとって重要な契約項目については契約書において明記するだけではなく、加盟前に加盟店に対して丁寧に説明を行うことが大切です。これにより、以後の加盟店トラブルを減少させることができます。
契約書はあくまで、本部のノウハウを加盟店に提供し、加盟店が成功するためのガードレールです。本部は、契約内容の再確認やとのコミュニケーションを重視しましょう。
・利益が出ない場合に問われる本部の責任とは
誠実に事業を行っていたとしても、フランチャイズは事業ですから予定通りの利益を加盟店が得られない場合(逆に予定よりも利益が出られる場合もあります)は想定されます。
加盟店の経営が順調であれば、多少の問題は大きくならないものです。利益が出ていない場合には、多少の問題が引き金となり、加盟店との間で大きなトラブルになる可能性が高まります。
その場合には、本部として必要な指導を十分行っていたかどうかが問われることになりますので、加盟店からサポート不足と言われないよう、生じた場合は、本部と協議を重ね、円満な解決を目指しましょう。最悪の場合、法的手段を取ることも視野に入れながら、適切な対処を行ってください。
・契約の作成にあたっては、必ず弁護士に相談してください
また、フランチャイズ加盟契約書の作成で必要となる項目は多岐にわたります。本稿で取り上げた事項は主要な事項について説明しているにすぎず、掲載している事例はあくまで事例にしかすぎません。当然、追加すべき項目もありますし、不要な項目があるかもしれません。
冒頭申し上げたように、ご自身のビジネスにあった契約書を作成するため、必ず、法律の専門家のアドバイスを受けながら作成しましょう。
スムーズなフランチャイズ事業拡大のため、ヴィラのサポートをご利用ください
ご自身の事業についてフランチャイズ本部を構築し、今後事業の拡大を目指される方にとっては、ビジネスモデルの構築や加盟店の募集といった表の面に注力して、よりフランチャイズ事業としてのネットワークの拡大速度をはやめたいと考えている方が多いでしょう。
その場合には、加盟店が増えることに発生する可能性が増加する法的トラブルについて、すでに知見のある本部構築支援会社の支援を仰ぐことでトラブルを未然に防ぐ、発生してしまった場合でもスムーズに解決することができます。
アジアンリラクゼーションヴィラの本部を運営する株式会社ヴィラでは、これまで6年間で250店舗以上の加盟店を増やしてまいりました。弊社の特徴としていえることは、新規開拓・複数店舗経営化、スケールのスピード感、といったところでしょうか。
その過程で、加盟店と締結する契約書のノウハウはもちろんのこと、加盟店との間で発生する典型的なトラブル等の事例、解決方法についてのノウハウを蓄積してまいりました。(もちろん、急な店舗拡大でのデメリットとなる部分も蓄積されております)
その経験からあなたの事業のフランチャイズ化に必要なリーガルアドバイスを、当社契約の法的専門家の支援を得ながら、事業者視点で余すところなくお伝えすることが可能です。フランチャイズ本部の構築支援についてご興味がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。